緩和曲線とは 概要

鉄道の線路は、直線と円曲線(円弧曲線)と、その間を繋ぐ緩和曲線からなります。直線と円曲線の間に緩和曲線があることで、乗り心地がよくなります。

緩和曲線がない場合のわかりやすい例は、分岐器(ポイント)です。ポイントには緩和曲線がないので、分岐側ではガクッと大きく揺れます。ポイントの曲線には緩和曲線もカントもないため、同じ半径でも通常のカーブより低い制限速度になっています。

あえて数学的・物理的に厳密な表現を使わずに言いますと、緩和曲線は遠心力を滑らかに(無段階で)変化させるものです。(厳密に言えば、曲率を滑らかに(無段階で)変化させるものです。)

模型でも充分に長い緩和曲線を使うことで、走行の見た目をよくすることができます。

遠心力(曲率)の変化

車両に乗っている人の感じる(見かけ上の)力である遠心力は、曲線半径に反比例することが知られています。半径無限大で遠心力ゼロの直線と、遠心力が一定の円曲線の間を、緩和曲線で繋ぎます。遠心力の変化のさせ方は、緩和曲線の両端で角折れのある直線逓減と、両端で角折れのない曲線逓減があります。

直線逓減
直線逓減での曲率の変化。曲率は直線的に変化し、両端には角折れがあります。
曲線逓減
曲線逓減での曲率の変化。曲率は曲線的に変化し、両端は滑らかに繋がります。曲率の変化(傾き)が最も急な部分の傾きが同じ場合、直線逓減より長い距離が必要になります。
サイン逓減
当サイトで鉄道模型用に紹介しているサイン曲線の4分の1波長を使った場合の曲率の変化です。曲率は曲線的に変化し、直線とは角折れして繋がり、円曲線とは滑らかに繋がります。曲率の変化(傾き)が最も急な部分の傾きが同じ場合、直線逓減より長い距離が必要になります。

直線逓減としては、完全に直線で変化するクロソイド曲線( clothoid curve , Euler spiral )があり、地下鉄などで採用が多いようでが、計算がより容易な三次放物線( cubic parabola , y = a x^3 )が代用される場合が基本のようです。曲線逓減では、曲率の変化がサイン波の谷から山まで半波長分となる、サイン半波長逓減曲線( sine half-wavelength diminishing trangent curve , cosine curve )があり新幹線で使われています。他にもカントの逓減では採用されることもあるサイン全波長を組み合わせた逓減のシヌソイド( sinusoidal curve , 正弦波の意味 )などがあります。サイン半波長逓減曲線には、厳密にサイン半波長で逓減する方法と扱いやすい2種類の代用方法があります(片方は当サイト独自です)。鉄道模型で曲率の曲がり方にあまりこだわらない場合では、サインカーブの緩和曲線を使用する方法が計算が便利です。

厳密には、単位速さ(速さ1)で走るときの、進行方向右側をプラスとする加速度の大きさを曲率と定義し、曲率を滑らかに変化させます。一定の速さで走っている限りは、車内にいる人の感じる遠心力と曲率は、比例関係にあります。(もちろん、車両の長さや振動を無視した理想的な場合の話です。)

実物での緩和曲線

実際の線路では、緩和曲線で遠心力(曲率)を滑らかに変化させると同時に、カントとスラッグも変化させます。カントでは内外のレールの高さに差を設けることで、より高速で走ることができるようになります。またスラッグでは、2軸貨車や3軸台車、SL等が走りやすくするために、また半径の小さい場合に、レールの間隔を少し広げて走りやすくします。

通常はこれらカントとスラッグを滑らかに変化させる区間と、緩和曲線の区間を一致させ、その増減を曲率(遠心力)の増減と一致させます。(直線逓減では直線状にカントを変化させ、曲線逓減では曲線状にカントを変化させます。) また、カントとスラッグの変化している区間の両端に、逓減標と曲線標を建植します。なので通常の場合は、逓減標が直線と緩和曲線の境界で、曲線標が緩和曲線と円曲線の境界になります。

古くに建設された半径の小さな曲線などではこの限りではないようです。このように緩和曲線がない場合や、緩和曲線の区間とカントの逓減の区間が一致していない場合などでは、逓減標はカントとスラッグに合わせることになっています。

緩和曲線と速度制限

実物では、曲線の制限に合わせて、制限標などの標識を建てていることがあります。鉄道事業者や路線によって、制限標の位置が違う場合があります。逓減標の場所から制限をかけているところもあれば、曲線標の近くに建てているところもあります。また、最高速度向上と同時に後者に変更したと公表された例としては、京浜急行があります。

また、ポイントとポイントの間に挟まれた短いカーブや、ポイントに隣接するカーブでやむをえない場合は、緩和曲線もカントも設けません。これらの場合はポイントと同様に、通常より低い制限速度になります。

当サイトで紹介している緩和曲線

当サイトでは鉄道模型への適用を念頭において書いているため、実物での表記方法とは異なる方法で表記している場合が多くあります。実物に対して緩和曲線で曲がる角度が大きくなることが、大きな理由です。また実物では緩和曲線の両端を真っすぐに結んだ線(弦)を10等分し、そこからの枕木方向の軌道中心までの距離(正矢量)を使うようですが、模型では軌道中心の線のケガキがあればよいので、これらの量には触れていません。また箱庭鉄道等人が乗れる場合でも、緩和曲線長に対して軌間の幅が大きくまた角度があるため、軌道中心の代わりに片側のレールまでの距離で代わりとすることが困難と思われます。また左右でレールの曲げ具合が異なることもあり、実物で使われている正矢量を直接適用することは(ひと手間加えずに使用することは)困難かと思います。

また緩和曲線の数式については、導出がなく自分用メモに近い内容となっていたりします、ごめんなさい。他にも内容や用語に誤りがあったり、誤りをこっそり訂正していることなどにつきましては、お詫び申し上げます。ごめんなさい、自分の勉強不足です。なお当サイトで配布している、PDFファイルのテンプレートの内容自体については誤りはないようになっておりますので、その点はご安心いただければと思います。